千石船の千石って?
何度でも言おう。弁才船は、かっこいい。そのかっこよさのひとつに、「デカい」ということがある。
どれくらいデカいのか、具体的に想像してみる。
弁才船の俗称、千石船(せんごくぶね)の「石(こく)」は体積の単位で、米を1,000石積載できる船の意である。
1石 = 10斗 一斗缶ってご存知?
= 100升 一升瓶はご存知じゃない?
= 1,000合 米1カップは1合よ? つまり180ml
であるから、
1,000石 = 180,000,000ml = 180,000リットル = 180立方メートル
米1,000石は10,000斗。一斗缶1万個分の米……大量ということは分かったが、ちょっとイメージしにくい。現在の貨物輸送は「4tトラック」など、重さが基準だ。米1,000石の重さを知りたい。あと、お米は一斗缶じゃなくて米俵に入っててほしい。
米俵には地域によっていろいろな大きさがあったようだが、明治以降は「四斗俵」(しとだわら)といって1俵=4斗になったという。だから米1,000石は2,500俵。米俵が2,500個。
お米屋さんの倉庫に積んである大きな薄茶色の米袋は60kg。これは昔の米俵1俵(四斗俵)を踏襲した規格で、「ふつうの大人ひとりが担げる重さ」なのだという。昔の人は力持ち。
それはさておき、1俵が60kgであるならば……
1,000石 = 10,000斗 = 2,500俵(四斗俵)
60 kg × 2,500俵 = 150,000 kg = 150 t
150t! 4tトラック37.5台分の米俵ですよ! ていうか、4tトラックには米俵が66.6666…俵しか積めないのか。すごいのかすごくないのか分からなくなってきたので、重さだけで考えよう。軽自動車1台の車両重量は約1tという。つまり、積み方のことを無視すれば、軽自動車を150台積めるということだ! うん、「デカい」感じになった!
額面通りに受け取れば、「千石船=積載重量150tの船」ということになるが、実際には千石積の船がそんなにたくさんあったわけではなく、二百石積(あんまり“千石船”感がない船型)から八百石積(このへんはかなり“千石船”っぽくなる)くらいのクラスが多かったようだ。また、千石積が最大でもなく、ウソかホントか二千石積、三千石積なんていう景気のいい船の話も聞いたことがある。千二百石とか千三百石あたりまでは信憑性があるようだ。
千石船の「千石」は、「億万長者」「百貫デブ」などと同様にキリの良いデカい数字をあてたものと考えた方がよさそうだ。ちなみに、百貫は375kgである。「百貫デブ」のネーミングセンスから敷衍すれば、三百石積くらいの船でもじゅうぶん「千石船」になるのではなかろうか。
余談:「江戸っ子だってねぇ」「寿司食いねぇ」で有名な広沢虎造の浪曲「石松三十石船道中」(『清水次郎長伝』)は、淀川を上り下る三十石船という貨客船の船上が舞台。三十石ならば四斗俵75俵で4.5t。「三十石船」でネット検索すると出てくる画像を見ると、たしかに4tトラックの荷台を平べったくしたくらいの大きさだ!

